教室概要(教授挨拶)

このたび、2019年10月1日付で、山梨大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座に赴任いたしました。これまで私は、千葉大学耳鼻咽喉科・頭頸部腫瘍学に所属し、頭頸部がんや、アレルギー疾患を中心として診療と研究を行ってきました。これまでの経験を生かして、山梨県の耳鼻咽喉科医療の維持と発展に取り組んでいきます。

耳鼻咽喉科の扱う領域には、多くの感覚器や機能があります。音を聞く聴覚、味を感じる味覚、においを感じる嗅覚、歩行やバランスをとる平衡機能や、食事に関わる嚥下機能、歌を歌うことや声を発する音声機能があり、それらによってコミュニケーションをとる、食事を楽しむ、散歩する、スポーツをするなど、人としての大切な生活の質に関わる機能が集中しています。そして、耳鼻咽喉科領域には、咽頭炎、中耳炎、アレルギー性鼻炎などの比較的一般的な疾患から、急性難聴・めまいなどの耳の疾患、声帯ポリープなどの喉頭疾患、唾液腺疾患、嗅覚障害、嚥下機能障害、顔面神経麻痺、頸部の感染症など、さまざまな疾患があります。

山梨大学ではこれら様々な疾患に対し各専門外来を設置して集約的・専門的な医療の提供を行っています。手術治療については、難治性の中耳炎に対する手術、高度難聴への人工内耳手術、副鼻腔炎や早期咽頭がんに対する内視鏡を用いた低侵襲手術など、専門的で高度な医療の提供に努めています。進行期の頭頸部がんに対しては、放射線・化学療法・手術治療を組み合わせて根治を目指した治療に取り組んでいます。同時に機能温存やQOLを考えた治療、さらに治療後の嚥下障害や音声障害の治療・リハビリにも取り組んでいます。とくに進行期の頭頸部がんの治療にあたっては、患者さんの年齢や生活環境、家族環境など個人の背景を踏まえて、関連する診療科や部門とチーム医療を行っており、最善の治療は何かを検討しながら治療を行っています。

また、近年のアレルギー疾患の増加・複雑化に対しては、山梨大学のアレルギーセンターによって、耳鼻咽喉科領域のアレルギー疾患にとどまらずアレルギー疾患の総合的な医療の提供に取り組んでいます。特に山梨県のスギ花粉症の有病率は全国トップであり、花粉症対策は重点的に取り組む課題の一つです。アレルギー性鼻炎に対しては、根本的な改善を目指した舌下免疫療法などアレルゲン免疫療法の積極的な導入を進めています。

今後も山梨県の耳鼻咽喉科医療の中心拠点として役割を担うとともに、大学病院として若手医師および専門医の育成、新しい治療や医療技術の開発にも力を入れていきます。どうぞよろしくお願いいたします。

耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座 教授
櫻井大樹